一、小学校教科書改訂の概要
教科書の内容は変わりますが、今回は指導要領自体の改訂が行なわれるわけではありません。従って、新しく盛り込まれる内容(以前から見れば、復活する内容)は、各教科書の「発展的学習」の部分に記載されます。その扱いは現行版の教科書でもそれぞれ異なりますから、ここではおおむね予想される一般的な内容のみをお伝えさせていただきます(項目によっては、現行の教科書に記載されているものもあります。また各社の教科書そのものは、来年の四月まで入手できません)。
以下各科ごとに、改訂のポイントを記します。
<国語>
・これまでA五判だった五、六年生用の教科書サイズが、一~四年生用と同様B五判(大学ノートサイズ)になります。
・総ページ数は、一割程度増えるもようです。
・「発展的学習」のページ数は、全体の約〇・九%程度のようです。
・FAXやメールのマナーなどが一部で取り上げられています。
・「古典」「漢文」の内容も、各社ごとに取り上げられています。
<社会>
・総ページ数は、一割程度増えるもようです。
・「発展的学習」のページ数は、全体の約三・五%程度のようです。
・教科書会社によっても違いがありますが、全般的に「拉致」や「テロ」などの文言が取り上げられているようです。
・写真やイラスト類のビジュアル化(CG類の多用などの視覚化)が、いっそう進んでいます。
・その他各社ごとに「発展的学習」の内容を工夫しています。
<算数>
・総ページ数は、二割程度増えるもようです。
・「発展的学習」のページ数は、全体の約三・六%程度のようです。
・その中で、各学年において注意すべきポイントを例示します。
算数の発展的学習のポイント
1年生 13-10=3 など ※現行では13-3=10まで
2年生 5000-3600=1400 など ※現行では100の位まで
3年生 359×158など3けた同士のかけ算 ※現行3けた×
2けた
4年生 2640÷40=66 など ※現行では3けた÷2けた
5年生 台形の面積の公式、小数第二・三位のかけ算・わり算など
6年生 異分母帯分数のかけ算・わり算、比の値・比を簡単にする など
<理科>
・総ページ数は、二割程度増えるもようです。
・「発展的学習」のページ数は、全体の約七・七%ほどであり、その割合は四教科の中でもっとも高くなっています。
・多岐にわたって各社の創意工夫がみられますが、特に六年生で、「食物連鎖」「心臓の構造(はたらき)」などの取り上げられていることが目立ちます。
二、こうした現状における民間教育の方向性と可能性について
お伝えしたような教科書改訂により、学校教育はこれまでの「ゆとり教育」から「学力重視」の方向へ大きく針路を変えるわけですが、ここでわれわれ民間教育の立場において何ができ、何をなすべきかということに、少し触れておきましょう。
いまの小・中学生の大半に共通する特徴として、学校で教えられていないことに対し、「習ってないからわかりません」という意味のことを、声高に叫ぶ性質が挙げられます。これを「あたりまえ」にさせないことが、われわれの立場に課せられた、大きな方向性であり可能性であると私どもでは考えます。
なぜなら、先ほどの教科書改訂の例から考えても、今後の教科書や指導要領の改訂が「学力重視」の方向へ向かってゆくのは、誰しも避けることのできない現実なのです。すなわち「今まで習った常識」では理解できないことがらに、これからの子どもたちは直面するのです。もちろん今の中学生以上の子たちも、同じことです。そうした時に、「わからないのがあたりまえ」ではなく、「知らないことを理解するのが面白い」子に育ってもらうことこそが、私塾という場にお子さんを預けていただくことへの責任だと考える次第です。
三、平成十七年度の私立中入試について
来春の私立中入試のキーワードは、今のところ三つであると考えられます。
ⓐ総受験者数のさらなる増加
ⓑ各校の大学合格者実績による人気=倍率の変動
ⓒ「国語力」の重要性
このうちⓐについては、全国の小学校六年生の一五%、総計約一八万人レベルの受験者が予想されると の見通しがあります。必然的に競争が激しくなる(倍率が高くなる)わけですが、各校の人気(倍率)を左右する決め手は、直近(平成十六年)の大学合格実績であるといわれています→ⓑ。そのため中高一貫の私学では、特進コースの強化等、大学進学に特に力を入れています。
また、ⓒについては、今年開成中学の入試において、傍線や指示番号が一切付されていない長文から、骨子や著者の意図を読み取って記述するという問題が出されました。これはもっとも顕著な例ですが、中学受験専門塾でも、「勝負のポイントは国語」と公言されているのが現在の状況です。
四、「勉強」とは?
つまるところ「勉強」とは、何なのでしょう。私どもでは、それは「自ら求める心」だと考えます。たとえば私の専門の文学における話ですが、決められたテキストを読むことや、お仕着せの鑑賞をくり返すばかりでは、自分自身に固有の想念、表
現は、決して生まれません。「なぜ?」そして「どのように?」という問いかけと挑戦をつづけることのみが、己れを向上させ、新しい地平を切り開く唯一の方法なのです。子どもにとっての「勉強」も、同様のことでしょう。勉強しろ、勉強しろ、という強制ではなく、子どもが自分から「勉強したい」と思えるような環境を整え、子どもを「その気にさせる」ことこそが、われわれに課せられた使命なのだと考えます。一般に「学問の秋」と称される季節がやってきました。受験生にとっては、いよいよ自分を追いこむ時。中学・高校等においても、各種行事が目白押しです。今号も特別編集号として、とくに本紙配布エリアに関わりの深い学校の行事予定を一覧で掲載しました。受験学年のご家庭ではすでにアプローチをはじめられていることでしょうが、受験準備学年のお子さんたちも、文化祭などには積極的にお出かけになることをおすすめします。出会い、めぐり合いのチャンスというものは、いつどんな時に用意されているか誰にもわからないものです。
私ごとですが、八月の下旬に義父を見送りました。のこしてくれたものの大きさを妻とともに語り合う日々の中、「いのち」の何たるかを改めて胸に刻んだ得がたいこの夏の体験は、私という人間のフィルターを通して子どもたちに伝えていきたいと思っています。