一、小学校教科書改訂の詳細(文京区採択教科書)
《国語・算数共通》
・これまでA5判だった5、6年生用の教科書サイズが、1~4年生用と同様にB5判(大学ノートサイズ)になりました。
《国語》
・平成17年度は、2、4、6年生は、昨年まで使っていた光村図書版の改訂版を使用します(2年上『たんぽぽ』、4年上『かがやき』、6年上『創造』)。
・1、3、5年生は、教育出版版『ひろがる言葉』を使用。18年度からは、全学年が教育出版版を使用することになります。
・光村版では、巻末に「言葉の森」というページが設けられました。通常授業で扱うものより長い文章で、想像力をゆたかにするような内容のものが載っています。教師の力量次第で、生徒の好き嫌いが分かれそうに思われます。6年では、狂言が取り上げられています。
・教育出版版では、巻末に「付録 言葉のポケット」が設けられました(1
年を除く)。3年で電話のかけ方、ファックスの送り方、ローマ字など。5年では、群読(一番手、二番手、総勢というふうに順番と読む場所を決めておき、舞台のような効果を学ぶ読み方)、インターネット、外来語などを取り上げています。これも教師の力量が問われそうです。なお1年では、『大きなかぶ』が昨年度の光村版と同じ教材です。
《社会》
・使う教科書は、今までと同じ東京書籍版『新しい社会』です。
・全体的な印象では、コンピューター・グラフィックがさらに増えた感じです。
・6年上巻の歴史では、特に戦後史で東京オリンピックの記述を拡大、わかりやすい編集を狙いとしたことがうかがわれます。出陣学徒壮行会(昭和十八年)と、東京オリンピックの開会式の写真が左右見開きで対比されており、印象的です。沖縄戦での米軍戦車による火焔放射の様子や、「平和の礎(いしじ)」の写真も加えられました。
・5年上巻の地理では、これまではスポットで登場していた農家や漁師の人々が本文構成のメインとして扱われており、やはり「親しみやすい」内容にという編集方針が見てとれます。
・3、4年上巻は、町やくらしについて学習する内容ですが、こちらでもやはりスーパーの店員さんや消防士、警官などが本文の中に登場します。
・劇的に取り扱いが変わったという項目は、ないようです。
《算数》
・使う教科書は、今までと同じ東京書籍版『新しい算数』です。
・全体的に、ページ数が10ページ程度増えています(5、6年は判型=サイズが変わったため比較できません)。
・3年生以上では、巻末に「おもしろ問題にチャレンジ!」(鉄腕アトムが登場)のページが設けられました。1、2年では分散されています。
・各学年において、注目すべきポイントを示します。
1年生~「ながさくらべ」の写真の扱いに工夫が加わりました。数量・計算に大きな変化は見られません。
2年生~くり上がり、くり下がりの理解のさせ方に、工夫が加わっています。
3年生~旧版では上巻の最後の章(9章)にあった3けたのたし算、ひき算が、5章にくり上がっています。「~チャレンジ!」では4けた÷1けた(2400÷3など)の計算も出てきますので、この辺りから計算力重視の傾向が見えてきます。
4年生~小数・分数が旧版の下巻から、上巻にうつりました。十進法の整理がうまく出来ていない新4年生には、少々難問です。
5年生~小数同士の割り算の筆算が、上巻に入りました。台形の面積の公式については上巻の目次からは判断できませんが、「 ~チャレンジ!」に入ることが予想されます。
6年生~「分数のかけ算・わり算を考えよう」が2章にまたがることとなり、「分数の倍」の考え方が導入されています。
・以上は目立った部分の抜粋です。3年生以上は各学年とも、1学期と夏休みにきちんとした勉強をすることが求められます。
《理科》
・使う教科書は、今までと同じ大日本図書版『たのしい理科』です。
・全体的に色使いや写真がより鮮明になった印象です。
・「自由研究」のページが充実しています。
・社会同様「わかりやすい」「親しみやすい」内容をめざしているようです。
・4年上巻では星座早見表に加え、実際の夜空の写真に星座のシートをかぶせたページが目立ちます。
二、中学校教科書改訂の概要
・検定完了が報道された段階であり、各社ともプレス発表以上の集約は、なされていません。新聞報道を要約します。
《4月6日付毎日新聞朝刊より》
「発展的学習」は、数学と理科で目立つ。数学では、前回削除された解の公式が全社で復活。「車のブレーキの制動距離」など、実生活と数学とのかかわりに気づかせる内容が増えた。理科では、「元素の周期表」が全社で復活。総ページ数も各社平均で23%増。「遺伝の規則性」を復活させた教科書会社も複数ある。
→文京区は現在数学が啓林館版、理科が大日本図書版ですが、来年採択も変わる可能性があります。
このほか国語では、夏目漱石の作品が三社で、森鴎外『高瀬舟』が一社で復活。また英語では、現役作家に書き下ろし教材を依頼したケースもある(光村図書版『コロンブス』)。なお、ジェンダー(性差別)、ジェンダー・フリー(社会・文化的な性差別の解消)の用語が扶桑社の公民を除いて使われなくなった。
・要約すると以上のようなところでしょう。小・中学校とも、授業時間の不足が指摘されており、教員の姿勢や力量、本人の取り組み方で大きな差がつくことが懸念されます。また公立と私立の学力差や、都立の中高一貫校の指導内容にも関心が集まるところでしょう。
三、これからの公立小・中学生の勉強について
今、塾の現場でお子さんたちをお預かりしていて思うことは、「ゆとり教育」が行くところまで行っていた、この三年間の重さです。
小学校、中学校、そして高校の段階でも、子どもが成長してゆく過程で学ぶべきことには、一定の量と質が、自ずと求められます。そしてさらに、そこで学ぶ経験を通して、「努力」や「工夫」といった、後から身につけようと思っても簡単には身につかない貴重な「生きるための糧(かて)」を、子どもたちは日々身につけてゆくのです。
もちろんこの三年間にあっても、子どもたちはそうしたことを少しずつ学んでいます。ただわれわれ教える側の目から見た実情、また今後の教科書改訂や文部科学省の路線変更と、かつ一方で授業時間数の相変わらずの不足ぶり、そうしたことを考え合わせると、これから学年が上がってゆく子どもたちがますます大変な現実に直面してゆくのだということを、心配せずにはいられません。
私は、この場所で学習塾を運営してゆくにあたって、すこしでも地域の皆様のお役に立てるよう、力を尽くして行きたいと思っています。
なお、来春開校の文京地区中高一貫6年制学校(現都立小石川高校の中高一貫校)の教科書採択が今年七月二十八日に発表され、注目されていた歴史の教科書については、白鴎高校附属中学校につづいて「新しい歴史教科書をつくる会」主導の扶桑社版の使用が決まった模様です。
夏休みも終り、いよいよ二学期です。一年近くご無沙汰してしまいましたことをお詫び申し上げます。
この間、本紙発行所である「東大前教室」の法人化(有限会社 言問学舎)や、お蔭様で順調に増え続けた生徒諸君の受験・学習指導、その他もろもろ教室をとりまく環境の変化に対応するなど、私の仕事量が前号発行時とは比較にならぬほどふえてしまったことが原因でした。
いま、少し落ち着きを取り戻して思うのは、小さな所帯である実情に加え私自身の力の足りなさと、であるがゆえ今後は無理のないペースで本紙の発行を続けて行く決意、即ち地域の皆様への教育情報の提供という当初からの発行目的を守り続けて行くことの再確認です。年四回の発行ペースを目標としてゆくために、従来とは少々異なった紙面づくりになる部分があるかも知れませんが、どうぞ今後ともご愛読下さいますよう、この場を借りてお願いする次第です。