来春改訂される中学校用教科書の、全国の採択地区別の採択(平成十八年度~二十一年度使用)が決まりました。採択地区とは、東京都では区市町村別(すなわち文京区立の小・中学校では科目ごとに共通の一社の教科書を使用=ただし移行措置期間あり*別注)、他府県では広域採択(例/愛知県豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市、新城市、宝飯郡、北設楽郡で一つの地区となる 他)というのが主流です。
こうした採択地区ごとに四年間の採択が決定し(*別注のケースを除いて途中変更はありません)、全国の集計が行なわれた段階で、教科書発行会社各社の動静にも一段落がつくわけですが、やはり今回も注目されたのは、扶桑社版「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史と公民の教科書の採択結果でした。小紙は民間教育の実践の場から地域のご家庭に身近な教育情報を発信することが目的ですので、論評は差し控えますが、ホームページや新聞等での報道によれば、その採択率は歴史で〇・四%、公民で〇・二%前後の数字になった模様です。なお文京地区中高一貫校で歴史の採択が決まっていることは、前号でお知らせした通りです。
文京区は大幅な採択変更
さて、みなさんに直接かかわりのある文京区の採択についてご紹介しましょう。主要五科について一覧にしてみます(*理科・社会・国語・英語について別注)。
科目 | 現在 → 新採択 |
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国語 | 東書 → 光村 |
社会 | 地) 帝国 → 東書 |
歴) 教出 → 東書 | |
公) 清水 → 東署 | |
数学 | 啓林館 → 啓林館 |
理科 | 一上) 大日本 → 東書 |
二上) 大日本 → 東書 | |
一下) 大日本 → 東書 | |
二下) 大日本 → 東書 | |
英語 | 教出(ワンワールド) → 三省堂 (ニュークラウン) |
*別注
理科・社会・国語・英語は内容上の問題から、学年によって旧採択の教科書を使う場合があります。それぞれ扱いが異なりますので、市販の教科書準拠版教材などを購入される場合は、特にご注意下さい。
理科 | 現中学2年生 現在持っている一分野下、二分野下の教科書をそのまま使います。 |
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現中学1年生 下巻に変わる時点で、大日本図書版の新版を使います。 |
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社会 | 現中学1年生 現在持っている地理、歴史の教科書をそのまま使います。 |
*現中学2年生の公民は、新採択の東京書籍版の新版です。 | |
国語 | 現中学2年生は、引き続き東京書籍版の新版を使います。 |
英語 | 現中学2年生、1年生とも、卒業まで教出版ワンワールドの新版を使います。 |
〈参考〉
小学校の国語についても、十八年度からは全学年が教育出版版の教科書を使うことになります。
以上が中学校の教科書採択に関するご報告です。改訂内容についての分析・報告は稿を改めたいと思いますが、前号でもお伝えした通り、内容的には前回削除された内容が復活する、即ち学力重視の方向ですので、早くから基礎的な学力を固めておくにこしたことはないでしょう。
私たちのあたらしいスタートにご期待下さい
~そして大切なお子さんたちの未来をお預け下さい~
この秋、私たちの小さな塾は「地域の総合学習塾 言問学舎」として生まれ変わります。
ご縁のあったお子さんたちの未来を思い
なりたい大人に、なって欲しい。
それが私たちの願いです。
なりたい大人になる。それはとてもむずかしいようでいて、けれどもだれにでもできうること。学力だけが将来のすべてを左右したのは、ふた昔も前の話です。学力は、むろん児童・生徒期の重要な要素ですが、「学力オンリー」ではないこの時代、より大切なのは、「自分で考え、自分で判断する力」。一人ひとりの課題レベルは違いますが、自分の課題に挑み、乗り越える努力には、レベルの違いなどありません。また、国語が好きな子もいれば、算数の好きな子も。図工が得意な子もいれば、体育なら誰にも負けない子もいます。そして図抜けた特徴は持っていなくとも、子どもたちは一人ひとり、その人だけにしかないすばらしい人間性を、内に秘めているのです。
児童・生徒期のわずかな学力差で、そのすばらしい人間性と可能性を狭めてしまうのは、周囲の大人の過ちであると私たちは考えます。誰もが持っている可能性を最大限に生かすため、私たちとの出会いをひとつの糧(かて)にして欲しい。そんな思いで、私たちはこの言葉をすべてのお子さんたちに送ります。
なりたい大人に、なって欲しい。
本号は縮小版にてお届けさせていただきます。私ども旧「東大前教室」が、あたらしく「地域の総合学習塾 言問学舎」としてスタートするご挨拶の号として、おゆるし下さい。本紙創刊準備号をお届けしたのが、二年前。この間私どもも、ご縁のあったお子さんたちの成長と歩みをあわせ、少しずつ成長してまいりました。これまでの皆様方のご支援に、心より感謝の言葉を述べさせていただきたいと思います。
本号の「漂うことば」には、昭和十七年(一九四二)に灰田勝彦さんが歌われた『鈴懸の径』の歌詞をご紹介しました。亡くなられたのは私が十九歳の秋。灰田さんを「亡き心の師」と慕うことで、苦しい青春時代を乗り越え、前向きに生きる力を持つことができた自分自身の体験を、少しずつでも現代の子供たち、若者たちに伝えたい。そうすることが、彼らにとっても何がしかのプラスになると思うのです。人を思う気持ち、人を敬う心が、巡り巡って自分自身の力になる。私はそんな「人」を育てていきたいと思っています。