- 公立中学と私立中学はどちらが良いのか
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経済面を抜きにしてお話しします。本来、「子どもの成長」という観点からすれば、公立中学へ進学することに、まったく問題はありません。 (入試で)選抜された子ばかりが集まる私立中学より、成績面でもいろいろな層の子が集まっている公立中学の人波の中で育つ方が、自然な姿だと言う考え方もできます。 が、首都圏で私立中受験熱が高いことには、理由があります。中でも大きいのは、学力と生活環境に関する問題でしょう。ゆとり時代の「週休2日制」導入以来、公立の授業時間数は極めて少なくなりました。私立は多くの学校が土曜授業を実施したり、7時間授業を実施したりして、カリキュラムの強化に努めています(公立中も都内ではほぼ月に1回、土曜授業が行なわれています。文京区周辺では、公開授業が主となっているようです)。特に私立は少子化の中で「教育の質」が学校経営に直結しますから、その質を上げることに学校を挙げて取り組んでいます。一人一人の先生が独立した「城主」である公立との差は、大きなものがあるのではないでしょうか。 生活環境の面で言えば、やはり私立に多少の安心感はあるでしょう。ただ、「私立にはイジメがない」と思うのは誤りです。これは人間の本質論の問題で、集団が成立すれば必ず何らかの差別的、排除的な心理というものは生まれます。ですからどのような学校でも、イジメもしくはそれに近いことは起こりうると考えるべきでしょう。その中で、私立では学校側がよく目を配っていて、対応も早いという期待が持てる分、「安心感」があると表現しました。 さて、私立と公立のもっとも大きな違いは、『建学の理念』の有無です。私立学校は、その学校独自の「こういう子を育てよう」という創立の精神、理念を持っています。その上で、経営努力をしながら教育を実践しているのであり、大半の公立校とは違う種類の情熱や真剣さがあると言えましょう。ですから、一概に「公立中学と私立中学のどちらが良いのか」と考えるのでなく、思春期の6年間を過ごす成長の舞台として、どちらがより本人のためになるのか、そこを基準に判断するべきではないでしょうか。 もちろん、いわゆる「面倒見」の点では、まず私立の方がいいと言い切って差し支えないでしょう(当然、学校ごとの違いが大きい領域であり、すべての私立が良いというわけではありません。公立と私立を一般的に比較した上で、ということです)。これは高校受験の選択においても同様です。経済事情が許し、自分ではなかなか勉強ができそうにないというお子さんなら、私立へ進むメリットは大きいでしょう。しかし区立中・都立高と進んでも、きちんと勉強し、大学受験はもちろん、勉強そのものについてしっかりしたものを身につけて成人して行く人もたくさんいるわけです。 ですから、親子でよく話し合い、「私立を受けるか受けないか。受けるとすればどこを受けるか」(中学受験)、「都立と私立、どちらを第一志望にするか。また私立の併願先をどこにするか」(高校受験)を慎重に決める必要があるのです。ただ中学受験の選択の場合、その時期が小学4年、満10歳から小学6年、満12歳にかけての時期ですから、ある程度親御さんの主導になるのはやむを得ません。ぜひ、お子さん本人の資質を見通し、かつ本人の意思をくみとって、最良の道を見つけて下さい。