小学生向け音読と読解の教材 開発中サンプル
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むかし。そう、ねこの世界の時間で三百ニアーほど前のことです。
ニアーとは、ねこたちの一年をあらわすことばで、にんげんの一年とくらべると、だいぶみじかいものでした。
そうですね。一ニアーをにんげんの時間になおすとしたら、二か月くらいになるのでしょうか。
そのころねこの世界では、国どうしのあらそいがつづいていました。
ねこ先生のすむマーター国は、六十ニアーほどせんそうのなかったへいわな国でしたが、
ねこの世界の大きなみんぞくあらそいにまきこまれ、王さまのしんせきの、とおいツグラー国へ、
おうえんのへいたいをださなければならなくなっていたのです。
これはそんな時代の、マーター国の名医ねこ先生と、
先生をしんらいしてささえつづけた、かんごふのみけのおはなしです。
「ねこ先生、きょうのかんじゃさんはいまのぶちさんでおしまいです。」
みけはいつものように西の谷のねこ医院のいりぐちをしめてかぎをかけると、
しんさつしつにもどってねこ先生に言いました。
「ああ、ごくろうさん。」
いつもなら、ねこ先生のやさしいへんじがあるはずです。でもきょうは、なぜかしらそのこえがきこえません。
「ねこ先生?」
みけがついたてのかげからねこ先生のつくえのほうをのぞいてみると、
ねこ先生は白衣もまだぬがす、じっとうでぐみをしてかんがえこんでいます。
「・・・・・・あんなねこ先生のよこがお、はじめて見るわ。何かあったのかしら・・・・・・。」
みけはしんぱいになって、ねこ先生を見つめていました。
するとそのけはいにきづいたのでしょう。
ねこ先生は回転いすにすわったまま、くるりと向きをかえ、みけをよびました。
「みけさん。ちょっとはなしがある。」
ねこ先生のまなざしは、いつになくしんけんです。
みけはおずおずと、ふだんかんじゃのねこたちがそうするように、ねこ先生のまえにすわりました。
「じつはな、みけさん。わしはこんど、王さまがおおくりになるへいたいといっしょに、ツグラー国へいかなければならなくなった。」
「えっ!」
それはみけがこのところ、ずっとおそれていたことです。
マーター国のオスねこたちは、ツグラー国へのおうえんのために、さいきんつぎつぎとよびだしをうけていました。
でもねこ先生はお医者さんだし、きっとそんなことにはならないと、みけはかたく信じていたのです。
いいえ。むりにでも、そう信じたかったのかもしれませんね。
「でも、でもねこ先生。先生はお医者さんだし、ぜったいにけんかやせんそうをしない、へいわしゅぎの方じゃありませんか。
むかしこの国がたちなおるとき、ねこけんぽう(マーターけんぽうともいいます)をつくるのに参加したのがじまんだって、いつもおっしゃってて・・・・・・。 それなのに、なぜ?」
そう、ねこ先生は、マーター国がねこの世界でもめずらしい、王さまを中心としたへいわてきなみんしゅしゅぎをじつげんした、マーターけんぽういいんかいのいいんでした。